転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


36 僕が賢者になれたわけ



「ルディーン君が自主的にやっていたようですからもう何も言いませんが、それでも親としては監督不十分ですよ」

「はぁ、すみません」

 魔法の練習は僕がかってにやっていたんだという事を一生懸命説明して、やっとルルモアさんはお父さんを許してくれた。
 でも、僕がやってた事ってそんなにおかしな事だったのかなぁ? そう思って聞いてみたら。

「あのねぇ、ルディーン君。魔法の練習は普通、魔力が枯渇するまでやったりしないものなのよ」

「えぇ、そうなの?」

 なんと僕がやっていた練習は、何から何まで全ておかしかったんだって。

 魔法の練習は僕と同じ様に3〜4歳から始めるのがいいと言われているらしいんだけど、普通最初は魔力を動かす練習から始めて、それがある程度できるようになってから呪文の発音練習に入るんだって。
 それで、その両方がちゃんとできるようになって初めて魔法を使う練習に入るらしいんだけど、それでも普通は一日に数回、それも魔法を使う場合はある程度時間を空けて練習をするものらしいんだ。

「ルディーン君は大丈夫だったみたいだけど、人によっては魔力枯渇で体調を崩す人もいるのよ。だからちゃんとした指導者の下で、体調を見ながら午前と午後の2回、1日2時間程度の練習をするのが普通ね。ルディーン君がやっていたみたいに魔法を魔力が枯渇するまで連発して魔力が回復したらまた同じ事をするなんて無茶な練習は、ある程度魔法になれた子だって絶対やらないわよ」

 ルルモアさんが言うには、魔法と言うのは本来、連発なんかしないものらしい。
 そう言えば確かにライトなんかは一度唱えればかなりの時間光り続けるし、攻撃魔法だって威力が高い分連発すれば魔物をひきつけてしまって危ないから、一度撃ったら移動しながら様子を見て次を撃つようにゲーム時代もしてたっけ。
 魔法を連続で使う場面が少ないのなら、僕みたいな練習をさせようと考える指導者がいないというのも解るよね。

「それに魔法を覚えるのは主にお金のある大商会の子供や貴族、それが王族だから指導する方も特に気を使ってるし、ルディーン君のような無茶な練習を、それも小さな頃から続けたなんて話は聞いた事がないわね」

 まぁ、僕は魔力が無くなるまで魔法を使うという行為が危険だなんて思った事も無かったからあんな無茶な練習をずっとしてきたけど、それを知っている指導者なら絶対にやらない練習法だった訳だ。

 でも、そうするとキャリーナ姉ちゃんが途中でライトの練習をやめたのは良かったのかもしれないなぁ。
 キュアはお兄ちゃんやお姉ちゃんの手や指の小さな怪我を治すくらいしか練習する方法が無かったから良かったけど、もしライトの練習を僕みたいにずっとやってたら病気になってたかもしれないもんね。

「しかし、そっか。ルディーン君の今があるのはそんな無茶をしたからなんだね」

「ん? なんのこと?」

「あのね、私はさっきも言った通りジョブを見る事ができないから断言はできないんだけど、能力値からすると君は何かしらのジョブをすでに得ているはずなの。でも年齢から考えて普通ではそんな事は考えられないから、私はてっきり君がかなり強い加護持ちなんじゃないかって考えていたのよ」

 ルルモアさんが納得したとばかりに、しみじみとそんな事を呟いたから何の事だろうと思って聞いてみたんだけど、彼女の口からは僕の知らない言葉が飛び出してきた。

 加護持ち? それって一体なんだろう?
 僕はステータスを見る事ができるから、自分にそんなスキルが備わっていないことを知ってる。
 まぁルルモアさんもそう思ってたって言ったから実際には僕に備わっていなかったて事なんだろうけど、ちょっと気になるよね。

 ところが。

「ああ、ルディーンは加護持ちらしいですよ。前に知り合ったエルフがそう熱く語ってくれましたから」

 お父さんがいきなりこんな事を言いだしたから僕は大混乱。
 もしかして知らないうちにそんなスキルが付いたのかと思ってステータスを開いてみたけど、僕のスキルの欄には相変わらず治癒魔力UP小しかなかった。

「おとうさん、かごってなに? ぼく、しらないよ」

「なんだルディーン、お前ヒュランデルさんの話を聞いてなかったのか? あの話を聞いたから俺はお前に錬金術の本を買ってやる気になったんだぞ」

 あの話? 錬金術の本? って事は、僕が油の事を考えていてお父さんたちの会話を聞いていなかった時にその話が出たのか。
 でもそんな物は僕には付いてないんだよなぁ。
 もしかしてお父さん、ヒュランデルさんに言いくるめられて高い本を買わされちゃったとか?

「ヒュランデル? って、もしかしてヒュランデル書店の店主、セラフィーナ・ヒュランデルさんの事ですか?」

 僕がそんな事を考えていたら、ルルモアさんが彼女の名前に反応した。
 だから僕は、名前を聞いてピンと来たって事は、やっぱりおだてられて買わされたのかなぁ? なんてちょっと失礼な事を考えたんだけど、

「ええ。昨日訪れた書店の店主であるヒュランデルさんがルディーンの事を見て『この子は加護持ちですから魔法の道へと進めば、いずれ大成します。だから魔道具作りもいいですが、より安価で練習になる錬金術を覚えるべきですわ』と言われたので、昨日この子に本を買い与えたんですよ」

「なるほど、彼女がそう言ったのならルディーン君は加護持ちですね」

 なんとルルモアさんはこの話を否定すること無く、僕が加護持ちであると認めてしまったんだ。

 でもちょっと待って、さっき確認したけど僕にそんなスキルは備わってないんだよね。
 って事はこの加護持ちって言うのはドラゴン&マジックオンライン当時にはなかったスキルって事なの? そう疑問を持った僕は、ルルモアさんにそのままぶつけてみる事にした。

「ねぇ、がごもちってなに? ぼく、なんかすごいの?」

「ああ、そう言えばルディーン君は聞いて無かったって話していたわね。さっき成長限界の話をしたでしょ? 加護持ちって言うのは、その成長限界が30を超えている人の事を指す言葉なのよ」

「そっか。かごもちって、30をこえたひとのことなのかぁ」

 僕のレベルキャプは30、確かにぎりぎりその数値を超えてるなぁ。
 でも、30オーバーだと何か普通の人と違うの? さっきの話だとレベルが上がりやすいくらいしか無かったと思うんだけど。

「その顔はピンと来てない感じね。でもルディーン君が加護持ちと聞いて疑問に思っていた事の全てのパーツがそろって、私はすっきりした気分なの。あのね、成長限界にはもう一つ秘密があって、30レベルを超えている人はジョブが付き易くなるのよ。魔大陸スランテーレがまだ封印される前は成長限界が30を超えている人たちがいっぱいいて、その頃はギルドなんか無かったから冒険者って言えばそんな人たちの事を指していたのよねぇ」

「ええっ!? ジョブって30いじょうになれるひとだとつきやすくなるの!」

 なんと、レベルキャプにはそんな秘密があったのか。

「えっ? ええ、そうよ。それでね、ジョブにはそれぞれその前段階と言われる一般職があるんだけど、それを10レベルまであげて初めてジョブをつける準備が出来上がるの。でも魔法職はまずその一般職を付けるのにもかなり苦労する上に、レベルも体を使う他の一般職に比べて上がりにくいのよ。だからルディーン君がその歳でジョブを得ていることが信じられなかったのよね」

「そっか、ぼくがそのかごもちってのだから、ジョブがもうついていてもふしぎじゃないっておもったんだね」

「う〜ん、それもそうなんだけど、正確には違うかな? たとえ加護持ちでもルディーン君の歳でジョブを得ることは普通ならたぶん無理よ。でもね、君が今までやってきた練習を考えれば当たり前とも思えるのよ」

「ぼくのれんしゅう?」

 そう聞き返したら、ルルモアさんは大きく頷いて自分が何故そう思ったのか僕に教えてくれたんだ。

「ルディーン君の練習方法はさっきも言った通り壮絶なものだったわ。それこそ一番最初の段階ですでに普通の人の5倍から6倍の練習量だったのに、たぶんその練習によってMPが増えた後も枯渇するまで練習を続けたのよね。と言う事は、それこそ普通に魔法使いを目指す人の十数倍の練習をして、その経験を積み上げたと言う事だわ。だからきっと、普通の人が何年もかけて得る見習い魔法使いを早いうちに習得して、その上レベルもあっと言う間に上がってしまったんでしょうね」

「そっか、ふつうじゃないもんね、ぼくのれんしゅう」

 なんか納得させられる説明だなぁ。
 一般職は命を狩らなくても鍛錬をすれば上げる事ができるけど、僕の場合はその鍛錬が非常識すぎて本来なら8歳で付くはずの一般職がすでにカンストしてたから、いきなりジョブを得たって訳か。

 と同時に、僕が何故上級職の賢者になれたのかも解った気がする。
 要は8歳になる前に見習い魔法使いも見習い神官も、両方がカンストしたんだと思う。
 で、本来ならそこからジョブに変化して成長が緩やかになるはずなんだろうけど、年齢がその基準に達して無かったから一般職を得る事さえ無いまま更に経験を重ねて、結果両方の一般職が30レベルになれるくらい経験が溜まるなんてありえない事が起こったんじゃないかなぁ。

 ルルモアさんの話では見習い一般職が10レベルになってもそれはあくまでジョブを得る条件がそろっただけだって話だから、ジョブに昇華されなければ更に上げ続ける事ができるのかもしれないもん。
 で、結果両方が30になって見習い賢者なんて本来はない一般職が生まれたんじゃないかって僕は想像したんだ。

 と言うか、そうでもなければいきなり賢者になるなんて考えられないもん。
 根拠はないけど、今の状態になった理由を僕はそう思うことにしたんだ。


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